苔寺 [西芳寺] | 拝観予約必須。写経体験・御朱印と庭園散策

苔寺 御朱印

苔寺(西芳寺)は、120種類余りの多様な苔に覆われた庭園が有名な世界文化遺産。苔好きの聖地です^^ ふらっと訪ねても参拝できませんのでご注意ください。

参拝するには、
(1)往復はがきによる事前予約
(2)参拝冥加料 3,000円
上記2点をクリアする必要ありです。

苔寺参拝の内容は、写経と庭園見学。1回に参加できる人数は70~80人くらいでしょうか。週末でも混雑することなく、写経体験と世界文化遺産の庭園をゆっくり堪能できます。拝観所要時間は60~90分。

予約方法、写経体験、お庭の見どころ、アクセス方法をシェアします^^

基本情報

苔寺 [正式名称:西芳寺]
所在地 京都市西京区松尾神ケ谷町56
TEL.075-391-3631
拝観時間 事前予約による
拝観料金 1名 3,000円(中学生以上)
※小学生以下の子供・乳幼児の同伴不可
西芳寺 公式サイト

【1】苔寺 [西芳寺] とは?

西芳寺(さいほうじ)は、鎌倉末期から南北朝時代に活躍した臨済宗の僧・夢窓疎石(むそうそせき)がプロデュースした禅寺です。

西芳寺庭園は、作庭の名手でもあった夢窓疎石が考案した自然と建築が調和した庭園。眺望を楽しむというスタイルが評判を呼び、鹿苑寺(金閣寺)庭園・慈照寺(銀閣寺)庭園をはじめ後世の庭園に大きな影響を与えました。

現在では、120種類余りの多様な苔に覆われていることから、通称:苔寺(こけでら)と呼ばれています。apple 創業者のスティーブ・ジョブズもお忍びで度々訪れたそうですよ。

以前は天龍寺の境外塔頭でしたが、現在は臨済宗の単立寺院です。

もこもこの苔

・夢窓疎石

夢窓疎石は、後世の禅文化に大きな影響を与えた僧です。

後醍醐天皇に才覚を見い出されて尊崇を受け、室町幕府初代将軍の足利尊氏・直義兄弟からも崇敬されました。足利氏は末代にいたるまで疎石の門徒に帰依することを約束し、室町時代を通じて夢窓派が隆盛することとなりました。

禅僧としての業績の他、禅庭・枯山水の作庭家としても有名で、天龍寺庭園・西芳寺庭園は、世界文化遺産に登録されています。

また、後醍醐天皇の鎮魂のために建立された天龍寺造営の際には、天龍寺船を派遣してその利益で造営費用を捻出するなど、商売人としての才覚も発揮。さらには、五山文学の有力漢詩人でもあり、勅撰和歌集に11首が入集するなど、文学史上でも足跡を残しています。

夢窓疎石  [1275-1351年]

夢窓疎石は、鎌倉・南北朝時代の僧侶。

建治元年(1275)伊勢に生まれ、九歳で出家し当初は天台宗に学びますが、永仁元年(1293)疎山と石頭という禅寺に行って達磨(だるま)半身の画像を得るという夢を見て禅宗に目覚め、京都建仁寺で無隠円範に学びます。そして、この夢にちなんで、後に自らを夢窓疎石と称しました。

後醍醐天皇の勅請により南禅寺に住し、また、北条高時に請われて鎌倉浄智寺、円覚寺に住します。鎌倉幕府滅亡後、後醍醐天皇の勅によって、京都臨川寺を開きました。

後醍醐天皇から「夢窓国師」の号を賜ります。建武の親政が崩壊すると、足利尊氏、足利直義の帰依を受けます。暦応 2年(1339)後醍醐天皇が亡くなると、その冥福を祈って京都天龍寺を開きました。

多くの門弟を育て、その数は一万人以上であったと伝えられています。門弟の中には、義堂周信、絶海中津など、後に五山文学の中心となった人々がいます。

出典:京都大学貴重資料デジタルアーカイブ より抄録

・西芳寺のあゆみ

西芳寺は様々な伝承のあるお寺です。

  1. 飛鳥時代:この地に聖徳太子の別荘があり、太子作の阿弥陀如来像が祀られていたといいます。
  2. 奈良時代:第45代 聖武天皇の勅願を得た僧・行基が別荘を法相宗寺院「西方寺(さいほうじ)」に改め、阿弥陀如来を本尊としました。畿内49院の一つであったとも伝わります。
  3. 平安時代:806年に第51代 平城天皇の第三皇子である真如法親王が草庵を結び修行したといいます。また、真言宗開祖・空海が入山し黄金池で放生会を行ったとの伝承もあります。
  4. 鎌倉時代:鎌倉幕府の重臣・中原師員(もろかず)が、西方寺・穢土寺(えどじ)という二つの寺に分けて再興。法然を招いて浄土宗に改宗しました。その後、建武年間 [1334-1338年]に再び荒廃。
  5. 室町時代:1339年、中原師員の4代目の孫、中原親秀(室町幕府の評定衆・松尾大社宮司)が、夢窓疎石に西方寺と穢土寺を寄進し再興を願い出ます。夢窓疎石65歳の時です。
    夢窓は二つの浄土宗寺院を統一し、堂宇と庭園を修復。禅寺「西芳寺」として見事に転化させました。造営にあたっては、戦乱で職を失った人々を雇用し民間からも崇敬を集めました。

    1469年、文明元年の兵火で建物を焼失しますが、幸いにも庭園の地割と石組みは保持されました。
  6. 安土桃山時代以降:兵乱や洪水などで荒廃と再興を繰り返します。現在のような苔に覆われた状態になったのは、江戸時代末期頃といわれます。
  7. 近代:昭和3年(1928年)より庭園を一般公開。昭和52年(1977年)からは観光公害* 対策のため、事前申込(往復はがき)による少数参拝制になりました。

観光公害*
1970年代に西芳寺周辺は観光客が増加し、ゴミや自動車の排気ガス・騒音や交通事故が増えて問題となりました。

・西芳寺、名前の由来

元々の寺名「西方寺」も、西方浄土の教主である阿弥陀如来を祀る寺にふさわしい名称ですが、夢窓疎石が臨済宗に改宗する際に「西芳寺」と改めました。

「西芳」とは、禅宗の開祖・達磨大師に関する故事「祖師西来、五葉聯芳」に由来し、本堂の西来堂(さいらいどう)には「西芳精舎」の額が掲げられました。

※精舎:僧侶が仏道を修行する所。寺院。

祖師西来、五葉聯芳(そし せいらい ごよう れんぽう)
祖師は西から来られて、五つの花が順に咲くように悟りを開かれた、という意味だそうです。※祖師=達磨大師

ミィコ

何度も荒廃と再興を繰り返しながらも、大切に受け継がれて現在の苔に覆われた美しい姿になっているんですね。感無量です。

【2】拝観申込み方法

西芳寺では、宗教的な雰囲気の中で心静かにお参りいただきたいという願いから、お寺本来の拝観方法を重要視されています。

本堂で写経をして奉納・参拝した後で、庭園を拝観します。庭園だけ見るという事は出来ません^^

・往復はがきで申込み

参拝証がないと参拝出来ません。
必ず、往復はがきで事前申込をして「参拝証」を手に入れましょう。そして、当日は参拝証を忘れずに持っていきましょう。忘れたら入れません!

  • 参拝希望日の2ヶ月前から受付。遅くても1週間前に必着。
    苔が美しい梅雨の時期、紅葉の時期は参拝申込が集中するので、早目に申込みましょう。複数の希望日を書いておくと安心です。
  • 往復はがきに参拝希望日、総人数、代表者の住所・氏名・電話番号を明記します。※時間指定はできません。
    申込多数の場合や法要のためご希望に添えない場合もあるそうです。

※詳しい書き方は公式サイトでご確認ください。

今回、週末の梅雨の時期を狙って念のため第3希望まで記入し、 第1希望日のきっかり2カ月前にポストに投函。

・返信はがきが拝観証

参拝証となる返信はがきは、1週間以内に届きました。先着順での受け付けのようで、 第1希望日の10時に決定。

西芳寺 拝観ハガキ

・おすすめの季節

せっかく訪れるなら、苔が生き生きと美しい庭園が見たいですよね。となると、雨の多い梅雨の季節がおすすめという事になります。

青紅葉と苔に覆われた緑の世界は必見です。そして、青紅葉が美しいという事は、秋の紅葉もさぞかし見ごたえがあるのではないでしょうか^^

  • 梅雨の季節
    6月下旬~7月初旬くらい。
    ※4月下旬~5月以降に申込。
  • 紅葉の季節
    11月中旬~12月初旬くらい。
    ※9月中旬以降に申込。
ミィコ

梅雨の時期の週末は混むのかなと、ちょっと心配していましたが無事に参拝証をゲット!早めにスケジュールを決めて申し込むのがポイントですね。

【3】苔寺 拝観ポイント

拝観の所要時間は60~90分。受付などの待ち時間も考慮すると、90分は予定しておいた方が安心だと思います。

・拝観受付まで

京都バスの終点「苔寺・鈴虫寺」に着いたらもうすぐです。途中の石垣も苔むしていて期待が高まります。最初に総門が見えてきますが、ここからは入れません。

西芳寺 総門
▲西芳寺 総門

もう少し進むと衆妙門があり、待っている人がチラホラ。駒札・拝観案内の札が立っているので、ここが出入り口で間違いなさそうです。

担当者が来られたら、予約ハガキを見せて門の中へ入ります。

西芳寺 門
▲西芳寺 衆妙門
西芳寺 本堂
▲西芳寺 本堂

門を入ると左前方に昭和44年(1969年)に再建された本堂、西来堂(さいらいどう)が現れます。手前に立派な枝垂桜もあって、春も楽しめそうです。

西芳寺境内
▲庫裡への道。青紅葉がキレイ

拝観受付は、本堂の奥にある庫裡です。ハガキと参拝冥加料 3,000円を支払い、庭園案内図を受け取ります。

御朱印を拝受したい場合は、この時に御朱印帳を預けます。志納金は帰りに御朱印帳と引き換えにお支払いします。

・本堂で写経

本堂内は写真不可。
ご本尊は阿弥陀如来、襖絵は日本画家・堂本印象の作品です。

広い本堂には、一人用の文机、墨汁の入った硯と墨と筆が、整然とセッティングされています。70~80名くらいが一度に写経できます。椅子席も少しありました。

西芳寺 本堂
▲本堂の廊下

文机の上に置かれた用紙は写経の説明書で、本番の「延命十句観音経」写経は、後ほど配られる原寸サイズ(薄く文字が印刷されている)の用紙を使用します。

ハガキに筆ペンと書いてあったので持参しましたが、せっかく硯や筆が用意されているので筆に変更。自分の下手具合にがっかりしつつも、印刷をなぞって筆をすすめば、なんとかなりました^^

西芳寺 写経説明
▲写経の説明用紙

「延命十句観音経」は 50文字くらいなので、 所要時間は個人差がありますが10分くらいで完成。

ご本尊の前に納経し参拝を終えたら、庭園へ向かいます。

・名勝庭園(下段|池泉回遊式)

西芳寺 境内図
▲西芳寺庭園 見学順路
  • 南北朝時代の作庭当初
    名園と名高く、華やかな風景を呈していたと伝えられています。康永元年(1342年)には北朝初代の光厳天皇が、室町幕府初代将軍の足利尊氏を従えて行幸されました。

    下段の平地部は、庭園を見下ろせる二層の楼閣「瑠璃殿」などの庭園建築(※当時の建築物は焼失)と花木に彩られた池泉回遊式庭園。上段の山腹には座禅堂「指東庵」と枯山水石組み。山頂には桂川を展望するための休憩所「縮遠亭」があったそうです。
  • 現在の庭園
    荒廃の後も庭園は苔に覆われながら保持され、その美しさから苔寺とも呼ばれ、史跡・特別名勝に指定されています。

    下段の黄金池を中心とした池泉回遊式庭園の地表は多様な苔に覆われ、楼閣はありませんが、庭を見渡せる開放的な茶室「湘南亭」や、上段の枯山水石組みに作庭当時の姿を少し偲ぶことが出来ます。
苔の庭入口
▲庭園への道。苔がキレイ
西芳寺 最初の池2
▲苔と池と木々
西芳寺 最初の池1
▲緑が美しいです
西芳寺 庭園
▲苔のじゅうたん
湘南亭茶室
▲茶室「湘南亭」

湘南亭
豊臣時代に千利休の次男、千少庵により建立された茶室。北に張り出した月見台が特徴で、庭園を見渡すことができる開放的な茶室です。千利休が豊臣秀吉より切腹を命じられた時、一時隠れ家として利用したと言われています。また、明治維新の際には岩倉具視がここに隠れ難を逃れました。

朝日ケ島を望む
▲奥が朝日ケ島
朝日ケ島と夕日ケ島
▲朝日ケ島と夕日ケ島
西芳寺 苔の橋
▲橋も苔むしています
夕日ケ島あたりの池
▲夕日ケ島あたりの池

黄金池(おうごんち)
西芳寺庭園の中心となる池。「心」の字をかたどっているので「心字池」とも呼ばれるそうです。心の形なのかどうかは、全くわかりませんでした^^

観音堂
▲観音堂が見えます

・名勝庭園(上段|枯山水)

暦応2年(1339年)に、夢窓疎石によって築かれた日本最古の枯山水の石組があります。

それまで庭園と言えば、池を中心とした池泉庭園が主流。禅の精神性を反映させた石組を庭の主役とする手法は、当時としては非常に革新的で、後の枯山水庭園の原点となりました。枯山水庭園の最高峰とも評されています。

西芳寺 向上関
▲向上関から上段の庭へ

指東庵(しとうあん)
西芳寺の開山堂です。行基菩薩、真如法親王、夢窓國師の御位牌と藤原親秀(中原親秀)夫妻、夢窓國師の木像が祀られています。

指東庵
▲指東庵

日本最古の枯山水石組み
指東庵の右横、かつて浄土宗の穢土寺があったと言われる場所にあります。自然な石組みは、夢窓疎石が自己の禅の精神を表した庭といわれます。

正直な感想は、単に岩がゴロゴロしているだけに見えたりして‥。白砂の波紋が美しい枯山水のイメージで探すと見逃してしまいますのでご注意。禅のお庭は奥深いですね。

西芳寺 枯山水
▲日本最古の枯山水の石組み
西芳寺 上段の道
▲上段の庭の道にも石がいっぱい
ミィコ

西芳寺の広い庭が苔に覆われた風景は圧巻です。

【4】御朱印

御朱印は、拝観受付の時にお願いする事が出来ます。

見開きタイプの御朱印で、日本に禅宗を伝えた達磨大師のイラスト入りです。印は「西芳精舎」

・御朱印

西芳寺 御朱印
ミィコ

とっても品のある御朱印です。控えめながらも、勢いのある筆跡がカッコいいです^^

【5】苔寺 アクセス

京都バスで行くのがおすすめ。バス停から苔寺までは徒歩約3分です。

[地図]

A地点:苔寺の出入り口、衆妙門
B地点:バス停「苔寺・鈴虫寺」
C地点:電車の最寄り駅

・京都駅から

・三条京阪から

  • 京都バス
    [Fのりば] 京都バス 63 苔寺・鈴虫寺行き「苔寺・鈴虫寺」まで約55分
    ※バス停は京阪電車出入口(6)番の南、鴨川沿いです。

・阪急嵐山駅から

・電車の最寄り駅

  • 阪急 嵐山線「松尾大社駅」から徒歩約17分
  • 阪急 嵐山線「上桂駅」から徒歩約16分
ミィコ

京都バスで「苔寺・鈴虫寺」を起点にするのが一番わかりやすいと思います^^

関連記事です!

近くの名所旧跡
鈴虫寺 [華厳寺] | 願いが一つだけ叶うお寺。軽妙な説法は必聴
地蔵院 | 竹林と紅葉と苔が美しい、一休さん生誕の寺

※この記事の史実に関する記載は、西芳寺公式サイト、西芳寺駒札、書籍「京都発見8/梅原猛」、Wikipedia等を参考に作成しました。