松尾大社 | お酒の神様、白虎に護られた洛西の氏神。見どころ紹介

松尾大社 白虎

松尾大社は、太古の磐座(いわくら)信仰を起源とする京都最古の神社の一つ。

四条通りの西端に鎮座される京都洛西の総氏神です。平安時代には皇城鎮護の神として崇敬され、室町時代末期頃からは「酒造第一祖神」として信仰されています。

見どころは、背後に松尾山が迫る本殿をはじめ、貴重な神像を間近に拝観できる神像館、昭和の名作庭家・重森三玲氏が作庭した庭園など盛りだくさん。

4月から5月にかけては、山吹の黄色い花で彩られることから「山吹の社」とも呼ばれます。

由緒や見どころ、御朱印、白虎おみくじ、アクセス方法をご紹介します。

基本情報

松尾大社(まつのおたいしゃ)
所在地 京都市西京区嵐山宮町3
TEL.075-871-5016
境内無料

・拝観料(庭園・神像館共通)大人 500円、学生 400円、子供 300円
・拝観時間 9:00~16:00(日・祝は16:30まで)

松尾大社 公式サイト

【1】松尾大社とは

太古より、洛西の住民は「松尾山の山霊」を松尾山の磐座に祀り、生活の守護神として尊崇していたと伝わります。その磐座信仰が松尾大社のはじまりです。

平安時代は皇城鎮護の神として、東の賀茂社(賀茂別雷神社・賀茂御祖神社)とともに「東の厳神、西の猛霊」と並び称され、中世以降は酒造りの神として崇敬されてきました。

松尾大社
▲松尾大社 赤鳥居
松尾大社 ヤマブキ
▲4~5月は山吹が満開

・磐座信仰が起源

磐座信仰の霊験は、朝鮮半島から渡来した秦氏によってパワーアップ。秦氏は、さまざまな先端技術を日本に持ちこみ、古代王権にも大きな影響を与えました。

  1. 5世紀より前から、洛西の住民は「松尾山の山霊」を松尾山の大杉谷頂上近くの磐座にお祀りしていたと伝わります。
  2. 古墳時代(5世紀頃)、朝廷が招いた新羅の秦(はた)氏の大集団がこの地に来住。松尾山の神を一族の総氏神として仰ぎつつ、新しい文化をもって開拓に従事しました。
    保津峡を開削、桂川に堤防を築き、所々に水を堰き止めて水路を走らせ、桂川両岸の荒野を農耕地へと開発。その功績から、松尾神は農産業、土木工業の守神とも仰がれたそうです。
  3. 飛鳥時代、文武天皇の御代。大宝元年(701年)に秦忌寸都理(はたのいみきとり)が、勅命をうけて山麓の現在地に神殿を創建し、山上の磐座の神霊を遷座。
  4. 奈良時代、天平2年(730年)朝廷より大社の称号を許されます。
  5. 平安時代、延暦13年(794年)平安京遷都後、賀茂社と並ぶ皇城鎮護の神として「賀茂の厳神、松尾の猛霊」と崇敬され、貞観元年(859年)には正一位の神階を授けられました。
  6. 鎌倉時代~安土桃山時代、源頼朝をはじめ、足利義政、豊臣秀吉など武門の崇敬をうけました。また、室町時代末期頃からは「酒造第一祖神」とされました。

・御祭神は山の神

  • 主祭神:大山咋神(オオヤマグイノカミ)
    山を支配する地主神であり、農耕・治水を司る神。
    古事記によると、比叡山を支配する神(現・日吉大社)と、松尾山を支配する神(現・松尾大社)がおられたと伝わります。
  • 相殿神:市杵島姫命(イチキシマヒメノミコト)
    海上守護の神。福岡県の宗像大社に祀られる三女神の一神。秦氏が朝鮮と交易をする関係から、天智天皇7年(668年)に航海の安全を祈って勧請されたと伝わります。

・神徒は亀と鯉

松尾大社の境内では、手水舎などに亀の像を見かけます。そのわけは、亀が御祭神の使徒とされているからです。

太古、御祭神が国を拓くために保津川を遡られる時、急流では鯉に、緩やかな流れでは亀の背に乗って進まれたと伝えられます。

この故事から、亀と鯉は神様のお使いとされています。

松尾大社 亀と鯉
▲亀と鯉の像
ミィコ

松尾神は、本当に古くから祀られている神様なんですね。

【2】御利益

洛西の総氏神として、さまざまな霊験で信仰されています。長い歴史の中で、時代に対応して松尾神の神徳も変革されてきました。

松尾神、ご神徳の変遷

  1. 太古。雷神・水神、転じて農耕神として信仰されました。
  2. 古墳時代。渡来した秦氏が土地を開拓したことから、農産業、土木工業の守神と仰がれました。
  3. 平安時代。皇城鎮護の神。加茂神と共に「加茂の厳神・松尾の猛霊」並び称され、弓矢の神、軍神としても畏敬されました。
  4. 室町時代末期。お酒の神様、酒造第一祖神。ブレイクのきっかけは不明‥

・さまざまな御利益

  • 開拓、治水、土木、建築商業、文化、交通、寿命、安産の守護神。

多分野にわたる御利益の多くは、かつて松尾大社を奉斎していた秦氏の技術とリンクしています。

・醸造祖神

  • 醸造祖神(酒、味噌、醤油、酢等)

松尾神を酒神とする信仰の起源は不明ですが、古事記によると酒の醸造技術を日本に伝えたのは秦氏の祖先。醸造祖神とうたわれたのは、秦氏が酒造りの先駆者で達人であったことに由来すると考えられています。

※日本の酒神は、水の神の信仰と強く結び付いている事から、農耕神のジャンルに分類されています。

松尾大社 お酒
▲奉納された酒樽
ミィコ

酒神が農耕神のジャンルと知れば、秦氏との関係もあわせて、御利益に説得力を感じます^^

【3】松尾大社 見どころ

松尾大社は、本殿の背後に迫る松尾山の鬱蒼とした木々や、むき出しの岩が印象的な社。古来、山の神をお祀りしていたという由緒に素直に納得できる雰囲気に包まれています。

見どころは色々ありますが、中でも庭園と神像館は必見です!

・御神蹟、磐座

松尾山は、古くから神霊が宿る領域として信仰された山です。

松尾山の大杉谷頂上近くに、御祭神が降臨されたという巨石(=磐座)、「御神蹟(ごしんせき)」があります。社殿が創建される前は、ここで祭祀が行われていました。

以前は「磐座登拝」をすることが出来ましたが、平成30年の台風21号による山崩れ等の影響で、磐座登拝道の修復が不可能となり「磐座登拝」は廃止されました。

・脇勧請

赤鳥居(二の鳥居)を見上げてください。何かぶら下がってますよね。

脇勧請(わきかんじょう)とは、榊(さかき)の小枝を束ねたものを、平年は12束、閏年は13束吊り下げる慣わしです。

昔は、これをもとに月々の農作物の出来具合を占ったと伝わります。占い方は詳しい資料が現存しないため不明ですが、太古の風俗をそのまま伝えていることから、民俗史学上も貴重な資料とされています。

松尾大社 鳥居
▲脇勧請(わきかんじょう)

・楼門

和様系の古式の楼門です。建造年は不明(江戸時代初期?)で、明治11年に大補修。左右に随神が配置されています。

松尾大社 楼門
▲楼門

・本殿、拝殿

  • 本殿
    大宝元年(701年)秦忌寸都理が勅命をうけて、松尾山の麓に神殿を創建して以来、皇室や幕府の手で改築されてきました。
    現在の本殿は室町時代初期の建造で、天文11年(1542年)に大修理を施したものです。「松尾造り」と呼ばれる特殊な両流造りで、重要文化財に指定されています。
  • 拝殿
    建造年不明(江戸時代初期?)明治11年に大補修。

本殿特別参拝
参拝料:1名、1,000円(幼稚園児以下は無料)
内 容:神職による説明とお祓いの儀式を含めて約20分程
参拝受付:10:00、11:30、13:30、14:30
※祭典などにより変更の場合があります
※正月7日間は中止

松尾大社 本殿
▲拝殿、本殿と松尾山

・霊亀の滝、亀の井

霊亀の滝、亀の井の水は、松尾神の磐座がある谷から湧き出る霊験あらたかな神水。

奈良時代の和銅7年(714年)には「瑞兆の亀(首に三台、背に七星をおった長さ八寸の亀)」が谷に現われ、朝廷に献じたところ、吉兆として元号が霊亀 [715-717年]に改められました。

  • 霊亀(れいき)の滝
    松尾山の磐座のある谷から流れ落ちる滝。癒しのパワースポットという噂も^^
  • 亀の井(かめのい)
    松尾山からの湧水の泉。水は諸病に効き、延命長寿・よみがえりの水と言われました。そして、この水を使った酒は腐敗しないと言われ、醸造家が持ち帰り仕込み水に混ぜるという風習もあったそうです。
松尾大社 霊亀の滝
▲霊亀の滝
松尾大社 亀の井
▲亀の井

・神像館、松風苑 [有料]

神像館はレアな文化財「神像」を間近に見ることが出来る宝物館。

松風苑(しょうふうえん)は、1975年(昭和50年)に完成したモダンな日本庭園で、昭和の作庭家として名高い重森三玲(しげもりみれい)氏の最晩年の作です。

見学順路

  1. 拝観受付でチケット購入。
  2. 曲水の庭・神像館・上古の庭を見学。
  3. 神像館の後ろを道を通って、霊亀の滝・亀の井を見学。
  4. 蓬莱の庭を見学。

※霊亀の滝・亀の井のみ見学の場合は無料です。
※亀の井から蓬莱の庭までは、かなり離れています。

松尾大社 拝観受付
▲拝観受付

・神像館

仏像とは異なり、ほとんど目にする機会がない貴重な「神像」を間近に見ることができます。写真撮影不可。

松尾大社の御祭神、大山咋神・市杵島姫命・御子神の3体の御神像は平安時代初期の作(重要文化財)で、日本最古に属するものです。また、摂社・末社に祀られていた御神像18体は、いずれも平安時代後期より鎌倉時代の作と言われ、神仏習合・末法思想の中で作られた歴史的にも価値のある御神像ばかりです。

神像(しんぞう)
日本の神道におけるカミをかたどった像。神道では、古くは鏡、玉、剣がカミの依り代として崇敬されてきたが、仏教が広まると仏像の影響により、神像が制作されるようになった。ただし、仏像とは異なる特徴を持つにいたる。また、一部に道教由来の神の像も見られる。

神像は木彫の坐像が多く、男神像の髪型はみずらまたは冠をかぶった衣冠装束が多く、女神像は十二単を着用しているものもある。神社に安置される神像は「ご神体」とされて一般に公開されることはあまりなく、寺院における仏像とは対照的である。

出典:Wikipedia

曲水の庭(平安風)

松尾大社が一番繫栄した平安時代の曲水庭園を、現代的に解釈して構成したモダンな庭園です。

松尾大社 曲水の庭
▲曲水の庭

上古の庭(磐座風)

松尾大社の信仰の始まった磐座にちなんだ庭園。一面のミヤコ笹が高山の趣を、巨石は神々を象徴しています。

松尾大社 上古の庭
▲上古の庭

蓬莱の庭(鎌倉風)

古代中国に伝わる、不老不死の薬を持つ仙人が住むという蓬莱を表現した池泉庭園。三玲氏が指示し、その後長男が遺志をついで完成させました。池には大きな鯉がたくさん泳いでいます。

蓬莱の庭の入口は、楼門の手前にある休憩処の奥になります。

松尾大社 蓬莱の庭入口
▲蓬莱の庭 入口
松尾大社 蓬莱の庭
▲蓬莱の庭

・お酒の資料館

神様とお酒のかかわり、暮らしの中のお酒の文化、酒造の工程などの展示や、ビデオを見ることが出来ます。ベンチもあるので休憩にもいいかも。

  • 入場無料
  • 開館時間 9:00~16:00
お酒の資料館
▲お酒の資料館
ミィコ

松尾大社に参拝したなら神像館と庭園は必見です。蓬莱の庭も忘れずに!

【4】白虎の御朱印、可愛い置物おみくじ

松尾大社が鎮座する松尾山は、白虎が宿ると信じられた西山連峰に位置します。平安遷都以降は「松尾の猛霊」と称せられ、都を守る神として崇敬されました。

白虎の御朱印や、可愛い白虎の置物おみくじなどの授与品があります。

・白虎の御朱印

通常の御朱印もありますが、金箔キラキラ、白虎のイラスト入り御朱印を拝受しました^^
日付以外は印刷です。

松尾大社 白虎御朱印

・白虎の可愛い置物おみくじ

とっても可愛い白虎の置物おみくじ。
自宅に持ち帰ったら、東を向くようにお祀りして御神徳を受けると良いそうです。

松尾大社 可愛いおみくじ
ミィコ

御朱印、おみくじの初穂料はそれぞれ500円。白虎の授与品は他にも色々ありました。

【5】松尾大社 アクセス

最寄り駅から徒歩約3分です。

最寄り駅、バス停留所

  • 阪急電車 嵐山線「松尾大社駅」
  • 市バス、京都バス「松尾大社前」

[地図]
B地点:松尾大社

A地点:阪急電車 嵐山線「松尾大社駅」、市バス「松尾大社前」

・京都駅から

  • 地下鉄→ 阪急京都線→ 阪急嵐山線
    (1) 地下鉄 国際会館行「四条烏丸駅」まで約3分。
    → [四条駅で阪急京都線に乗り換え]→
    (2) 阪急京都線 大阪梅田行「桂駅」まで約5分~8分。
    → [桂駅で阪急嵐山線に乗り換え]→
    (3) 阪急嵐山線 嵐山行「松尾大社駅」まで約4分。
    ※合計所要時間約30分~40分
  • 京都駅前バスターミナル
    ・[C6のりば] 市バス28 嵐山大覚寺行「松尾大社前」まで約37分。
    ・[C6のりば] 京都バス73 苔寺・鈴虫寺行「松尾大社前」まで約53分。
  • TAXI 所要時間 約24分
    総距離 約8.4km タクシー料金検索
    ※料金・所要時間は実際とは異なる可能性があります。

・四条河原町から

  • 阪急京都線→ 阪急嵐山線
    (1) 阪急京都線 大阪梅田行「桂駅」まで約5分~8分。
    → [桂駅で阪急嵐山線に乗り換え]→
    (2) 阪急嵐山線 嵐山行「松尾大社駅」まで約4分。
    ※合計所要時間約15分~30分
ミィコ

大陸から渡来した秦氏。日本人のルーツに深くかかわっていことは明白ですね。でもって秦氏のルーツは中近東、イスラエルまで遡るという説もあったり、今後解明されることはあるのでしょうか?

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※この記事の史実に関する記載は、松尾大社公式サイト、パンフレット、駒札、日本釀造協會雜誌 酒神と神社(加藤百一)、Wikipedia、コトバンク等を参考に作成しました。