平安神宮 | 再現された平安京の大極殿・神苑が見どころ

平安神宮

平安神宮は、平安時代の神社ではありません。古社が多い京都ではかなり新しく明治28年(1895年)に、平安遷都1100年記念事業として建立されました。

御祭神は、延暦13年(794年)に京都の地に平安京を建都した桓武天皇(かんむてんのう)と、平安京最後の天皇・孝明天皇(こうめいてんのう)です。

一般的な神社と雰囲気が違うのは、平安京の大極殿(だいごくでん)を模して造られたから。緑色の碧瓦(へきがわら、緑釉瓦)と朱色の建物のコントラストが豪華!

由来・ご利益、見どころ、アクセスをまとめました。

基本情報

平安神宮
所在地 京都市左京区岡崎西天王町97
TEL.075-761-0221
平安神宮 公式サイト

■本殿・境内参拝 無料
2/15~3/14 6:00~17:30
3/15~9/30 6:00~18:00
10/1~10/31 6:00~17:30
11/1~2/14 6:00~17:00
※お守・お札・御朱印 7:30~17:00

■神苑拝観 大人1名 600円
3/1~9/30 8:30~17:30
10/1~10/31 8:30~17:00
11/1~2/28 8:30~16:30
※時代祭当日は時間変更
※正確な時間は公式サイトでご確認ください。

【1】平安神宮の由緒

幕末の動乱の舞台となった京都。慶応3年(1867年)15代将軍 徳川慶喜が二条城で大政奉還の意を表明、武家政権の時代が終わり、天皇親政を基本とする明治新政府が始動しました。

そして慶応4年 / 明治元年(1868年)、京都から東京へ首都が移され、明治天皇が東京に行幸されると京都の人口は著しく減少し経済も衰退、市民の心に大きな打撃を与えました。

しかし落ち込んでばかりはいられません! 古き良き京都を維持継承しながら活気を取り戻そうと、様々な近代化事業に着手し復興への取り組みが始まりました。

・京都復興のシンボル

平安神宮の建立は、京都復興プロジェクトの一つです。

明治28年(1895年)は、平安京に都が移り、桓武天皇が大極殿ではじめて正月の拝賀を受けた延暦15年(796年)から1100年目。

京都実業協会が、この節目の年に向けて平安神宮を創建する「平安遷都千百年紀念祭」開催と「第4回内国勧業博覧会」誘致を明治25年(1892年)に企画しました。

これらの取り組みは国に協力を求めた結果、国家的な行事となり、市民のみならず京都に思い入れのある全国の人々からの寄附金を募り計画が進められました。

・平安遷都1100年

明治28年3月15日に平安神宮が完成。

4月1日~7月31日に岡崎公園で開催された「第4回内国勧業博覧会」は、入場者数113万人に達し大成功。同時に道路・旅宿の整備が進み、観光都市としての基礎が作られました。

そして、10月22日~25日の「平安遷都千百年紀念祭」で余興として行われた時代行列は「時代祭」として今に続いています。※10月22日は、延暦13年(794年)に桓武天皇が平安京に入られた日です。

平安神宮が創建された明治28年は、正式な交通機関として日本初の市街電車も登場。京都の復興と、電力時代の幕開けを象徴する年になりました。

[資料] 京都の文化遺産|明治の近代化への歩み

場所が郊外の岡崎になった理由
当初の計画は、平安京遷都当時の本来の場所に、大内裏の中心的施設「朝堂院」全体を復元しようというものでした。

しかし結局、用地買収が上手くいかないことや資金の問題から、郊外の岡崎に記念モニュメントとして「大極殿」と「応天門」だけを8分の5サイズで復元することになったのです。

当時の岡崎一帯は、田畑の広がるのどかな土地だったそうです。

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平安神宮は、明治時代の京都再生・近代化政策のシンボルと言っても過言ではないですね。

【2】平安神宮の御利益

その名の通り「平安」を祈願するのにぴったりの神社です。
平安京と言う名からも、いつまでも無事で穏やかな国家・社会でありたいという意図が感じられますよね。

正直なところ、創建が京都の古社とくらべると新しすぎて、特に○○○に効くという伝承はまだないです。

・ご祭神とご利益

京都に平安京を建都された、桓武天皇がお祀りされています。後に平安京最後の天皇・孝明天皇が合祀されました。

御祭神

  • 東本殿:第50代 桓武天皇 [在位 781年~806年]
  • 西本殿:第121代 孝明天皇 [在位 1846年~1867年]

御利益

家内安全、厄除開運、縁結び、商売繁盛、安産祈願・合格祈願・病気平癒・心願成就・交通安全など幅広いご祈祷が受けられます。

御祭神の桓武天皇は1,000年以上続いた平安京を建都されたわけで、御利益の効果も長い目で見るのが正解じゃないでしょうか^^

平安(へいあん)
やすらかで変わったことのないこと。無事平穏なこと。また、そのさま。「心の平安を保つ」「平安な日々を送る」

出典:デジタル大辞林
平安神宮 授与所
▲応天門の北側に、授与所・集印所があります。

・平安神宮の歴史

  1. 延暦13年(794年)平安京遷都。
  2. 延暦15年(796年)桓武天皇、大極殿で初めての正月拝賀。
  3. 明治元年(1868年)首都が東京に遷り、京都は衰退。
    明治25年(1892年)京都復興政策の一環として、桓武天皇を顕彰する祭典と、大極殿・応天門を再現した神宮建立が市議会で可決。
  4. 明治28年(1895年)平安神宮が完成。「平安遷都千百年紀念祭」成功。
    この後も近代化のための「京都策」が推進され、京都の再生を導きました。
  5. 昭和15年(1940年)皇紀2600年と孝明天皇没後75年目を記念して、社殿を新築・改築し、孝明天皇を合祀。
  6. 昭和51年(1976年)放火テロで本殿・内拝殿など9棟が焼失。全国からの募金により3年後に再建。
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平安のご利益は、新生活のスタートにもぴったり。平安神宮で結婚式を挙げて、隣接する平安神宮会館で披露宴をされ方も多いようです。

【3】平安神宮の見どころ

平安神宮の建築物は、ベンガラによる鮮やかな朱塗りの建物と、緑釉瓦の屋根のコントラストが美しく豪華で、普通の神社とは一線を画した雰囲気に包まれています。

※屋根の緑釉瓦に関しては、平安時代は全面ではなく縁取りとして使用されていたそうです。

・平安神宮 大鳥居

昭和4年に竣工。高さ24m、幅18mの大鳥居。平安神宮の応天門から約300メートル南の神宮道にそびえ立っています。

平安神宮創建当初は、神宮に見合う大きな鳥居を石材や木材で建造するのは困難だったため鳥居がない状態が続き、鳥居の建造は課題となっていました。

1928年(昭和3年)に昭和天皇の即位という慶事が決まり、平安神宮に鳥居を建設する話が本格化。建築技術の進歩により、鉄骨鉄筋コンクリートでの鳥居建造が実現しました。

平安神宮大鳥居
▲平安神宮 大鳥居

・神門|応天門の復元

平安宮の大内裏の正庁である朝堂院(ちょうどういん)正門「応天門」を8分の5のサイズに縮小復元したものです。

平安神宮 応天門
▲緑の屋根が印象的な応天門
平安神宮 応天門

・外拝殿|大極殿の復元

外拝殿は、平安宮の大内裏の正庁である朝堂院の「大極殿」を8分の5に縮小復元したものです。

平安京の大極殿は火災により2度建て替えられていて、復元の際には後白河法皇の命で作られた『年中行事絵巻』に描かれた姿(延久4年(1072年)の再建)を参考にしたそうです。

大極殿から内回廊でつながる向かって右端の小楼閣は、四神にちなんで、蒼龍楼(そうりゅうろう)、左は白虎楼(びゃっころう)と呼ばれます。

そして、前庭には向かって右に「左近の桜」、左に「右近の橘」が配置されています。

「左近の桜、右近の橘」
平安宮内裏の紫宸殿前庭に植えられている桜と橘にならったもの。左近・右近は左近衛府・右近衛府の略称。左近は紫宸殿の東方に、右近は西方に陣をしき、ちょうどその陣頭の辺に植えられているのでこの名があります。

桓武天皇の平安京遷都の際は、桜ではなく梅の木が植えられましたが、天徳4年(960年)の内裏火災の際に焼失し、再建後に梅に代えて重明親王の家の桜を植えたのが今に伝わっているそうです。

平安神宮 大極殿
▲大極殿、8分の5サイズでも大きいです。
平安神宮 大極殿

一般参拝者は大極殿を模した外拝殿から参拝します。さらに奥の内拝殿・本殿へは入ることはできません。※結婚式は除きます。

平安神宮
▲白虎楼に神苑の入口・拝観券売り場があります。

・四つの神苑(南、西、中、東)

平安神宮神苑は、明治時代の代表的な池泉回遊式の日本庭園として知られています。総面積は約33,000㎡(約10,000坪)。

作庭は「植治(うえじ)」と呼ばれ、円山公園や無鄰菴など多くの名園を手掛けた名造園家、七代目小川治兵衛(おがわ じへえ)によるもので、20年以上の歳月をかけて完成しました。

ちなみに「植治」は現在11代目に引き継がれています。

神苑 地図

南神苑(平安の苑)

平安神宮創建当初より、八重紅枝垂桜(やえべにしだれざくら)の名所として、親しまれています。

昭和時代には、平安時代の特色である野筋ある(道筋)と鑓水が設けられ、竹取物語・伊勢物語・古今和歌集・枕草子・源氏物語に登場する草木約180種類を植栽、王朝文化をしのばせる庭「平安の苑(へいあんのその)」となりました。

また、一隅に平安神宮創建と同じ年に京都市内に敷設された、日本で最初の路面電車(チンチン電車)が展示されています。

最古の市電
▲日本で最初の路面電車

西神苑

南神苑の樹林を抜けると白虎池(びゃっこいけ)のある西神苑。

この池畔には、約200品種・2,000株の花菖蒲が植えられていて、初夏になるとスイレンと共に華やかに水辺を彩ります。

また、西神苑内にある茶室「澄心亭(ちょうしんてい)」では、毎月( 4・8月除く )第2日曜日にお茶席「月釜」が開催され、誰でも自由に参加することができます。 ※お茶券 800円

平安神宮 南苑
▲緑の季節
平安神宮 花菖蒲
▲6月頃の花菖蒲 京都フリー写真

中神苑

蒼龍池(そうりゅういけ)の北側から東の珊瑚島にかけて並んだ丸い石は臥龍橋(がりゅうきょう)とよばれ、豊臣秀吉によって造営された三条大橋と五条大橋の橋脚を利用したものです。

この飛び石を渡り、写真左手にある珊瑚島を経由して南岸まで行くことも出来ます。※時期によっては通行止めの場合もあります。

平安神宮 中苑
▲臥龍橋
平安神宮 中苑
▲休憩処

東神苑

東神苑は東山を借景とした明治時代を代表する名庭。明治末期から大正初期にかけて造られました。

京都御所から移築された橋殿・泰平閣(たいへいかく)や、尚美館(貴賓館)の前に広大な栖鳳池(せいほういけ)が広がり、「蓬莱山」を表したという鶴島・亀島の二島が配されています。

池の周囲には、八重紅枝垂桜・さつき・椿など多様な花木が植栽され、水面に写る姿は格別の風情があります。

泰平閣は橋長29mの屋根付きの橋で、両側はベンチになっています。腰掛けてゆっくり風景を鑑賞できますよ。

平安神宮 東苑
▲栖鳳池にかかる橋殿・泰平閣
泰平閣 平安神宮
▲泰平閣の内部
平安神宮 東苑
▲泰平閣から尚美館を望む
平安神宮 東苑

・平安神宮の桜

春になると、約150本の八重紅枝垂桜が咲き誇ります。神苑のおすすめ時期は、やっぱり桜の季節。混雑するけれど、皆で美しさを分かち合いましょう^^

平安神宮の桜の美しさは、谷崎潤一郎や川端康成の作品にも描かれています。

この神苑の花が洛中における最も美しい、最も見事な花であるからで、円山公園の枝垂桜がすでに年老い、 年々に色あせていく今日では、まことにここの花をおいて京落の春を代表するものはないといってよい。

出典:谷崎潤一郎「細雪」

川端康成は谷崎の文章を引用しています。

みごとなのは神苑をいろどる、紅しだれ桜の群れである。今は「まことに、ここの花をおいて、京落の春を代表するものはないと言ってよい」

出典:川端康成「古都」
平安神宮 桜
▲桜の季節 PhotoAC
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神苑の見頃は、何といっても桜の季節が一番ですね。

【4】生きた時代絵巻「時代祭」

時代祭は京都の三大祭りのひとつで、毎年10月22日(雨天順延)に行われる平安神宮の大祭です。京都市民が心を一つにして、未来の平安を祈る祭礼です。

・毎年10月22日開催

第1回目は10月25日でしたが、2回目からは、桓武天皇が平安京に入られた日・延暦13年(794年)10月22日に行われています。

桓武天皇・孝明天皇の御霊代をお遷しした2基の輿「鳳輦(ほうれん)」を中心とする神幸列に、平安時代から明治時代までの時代装束に身を包んだ約2千人がお供をして、京都御所から平安神宮まで、約2kmの距離を3時間かけて華麗に巡行します。

■ 時代祭行列の順路
平安神宮公式サイト|時代祭

京都三大祭り
・「葵祭」上賀茂神社・下鴨神社/5月15日
・「祇園祭」八坂神社/7月1日~31日
・「時代祭」平安神宮/10月22日

・京都の「本物」を披露

「生きた時代絵巻」「動く歴史風俗絵巻」と表現される時代祭の行列は、明治維新時代→江戸時代 →安土桃山時代 →室町時代 → 吉野時代→ 鎌倉時代→ 藤原時代→ 延暦時代の8の時代を再現しています。

祭で使用される約1万2000点の調度・衣裳・祭具は、綿密な時代考証が重ねられ、京都が1000年の間培って来た伝統工芸技術の粋を集めて復元した正真正銘の「本物」なのです!

時代祭は、京都の歴史と文化が一目でわかるとともに、京都人の誇りと心意気が織り込まれた品々を、内外に披露するための祭でもあるのです。

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チープなコスプレとは一線を画した、京都の伝統産業の底力と心意気を感じてください!!

【5】平安神宮 アクセス

平安神宮大鳥居を間近に見たい場合、電車の場合は「東山駅」「三条駅」、バスの場合は「岡崎公園 美術館・平安神宮前」で下車して、参拝するのがおすすめ。

「神宮丸太町」「岡崎公園 ロームシアター京都・みやこめっせ前」「岡崎公園 動物園前」からは、応天門が近いです。大鳥居は向こうに見える感じです。(約300m南)

最寄りバス停

  • 「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車 北へ徒歩約6分。
  • 「岡崎公園 動物園前」下車 西へ徒歩約6分。
  • 「岡崎公園 ロームシアター京都・みやこめっせ前」下車 東へ徒歩約6分。

電車の最寄り駅

  • 地下鉄東西線「東山駅」 から徒歩約13分。
  • 京阪本線「三条駅」から徒歩約19分。
  • 京阪鴨東線 「神宮丸太町駅」 から徒歩約18分。

・京都駅前バスターミナルから

★京都駅前バスターミナルのりば案内
[A1のりば] 市バス5 平安神宮・銀閣寺・岩倉行 
[D1のりば] 市バス100、110 清水寺祇園・銀閣寺行
※「岡崎公園 美術館・平安神宮前」まで約26分、「岡崎公園 動物園前」まで約27分。下車徒歩約6分

・四条京阪から

[Aのりば] 市バス46  祇園・平安神宮行き
※「岡崎公園 美術館・平安神宮前」まで約14分、下車徒歩約6分

・三条京阪から

[Dのりば]
市バス5 平安神宮・銀閣寺・岩倉行 
※「岡崎公園 美術館・平安神宮前」まで約7分、下車徒歩約6分
京都岡崎ループバス
※「岡崎公園 ロームシアター京都・みやこめっせ前」下車、東へ徒歩約6分

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平安神宮の隣には商業施設、京都・時代祭館 十二十二(トニトニ)、近くには美術館や動物園もあります。

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桓武天皇 柏原陵 | 平安京に遷都をした天皇の陵墓

※この記事の史実に関する記載は、平安神宮公式サイト、駒札、京都風光サイト、Wikipedia等、書籍「京都の寺社505を歩く」等を参考に作成しました。