梅宮大社は、奈良時代からお酒の神様として崇敬されるとともに、安産の神様としても篤く信仰されてきました。
特に安産祈願は、子に恵まれなかった檀林皇后が仁明天皇を授かったという由緒あるもので、当時の風習が今に伝わっています。
また、境内では季節おりおりの花に彩られる神苑や、猫さんがくつろぐ姿も楽しめます。猫好きには嬉しい神社です^^
神社の歴史、御利益でまつわるエピソード、神苑、アクセス方法をご紹介します。
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【1】梅宮大社とは
奈良時代に皇室と深い関係にあった四姓*のひとつ、橘氏の氏神として知られ、日本第一酒造の祖神、子授け安産の神、学業・音楽・芸能の神として信仰されてきました。
四季折々の花が彩る広い神苑、近年は猫たち(神社の飼い猫)がまったりくつろぐ姿でも知られます。
*四姓とは、昔の日本の四つの名家のこと(源・平・藤原・橘)。
・梅宮大社の歴史
創建や変遷の詳細は不明。
- 奈良時代。綴喜郡井手町付近に、橘氏の祖・橘諸兄(たちばな の もろえ)の母・県犬養三千代(あがた の いぬかい の みちよ/橘三千代)が、酒造安全と子孫繁栄を祈願して橘氏の氏神「梅宮社」を創祀したと伝わります。
- 天平宝字年間(757年~765年)三千代の子で聖武天皇の妃・光明皇后と藤原武智麻呂夫人の牟漏女王によって奈良に移されたのち、木津川上流の桛山(かせやま)を経て、平安時代始めに嵯峨天皇の皇后・檀林皇后(橘嘉智子)によって現在地に遷祀されました。
- 平安時代には年2回の梅宮祭が勅祭として行われました。
仁寿年間(851年~854年)相殿四座をお祀りしました。
延長5年(927年)延喜式「名神大社」に列せられました。
正暦5年(994年)二十社の一つに列せられました。(後の二十二社の制)
治承4年(1180年)正一位が授けらました。 - 室町時代、文明6年(1474年)戦乱により焼失。
- 江戸時代、元禄13年(1700年)5代将軍・徳川綱吉の命により、本殿、拝殿、楼門など現在の社殿が再建されました。
- 明治4年(1871年)「梅宮神社」となります。
- 昭和26年(1951年)「梅宮大社」と改称。
・主祭神|本殿
本殿に祀られる4柱は、日本酒醸造に関わる神号の梅宮大社特有の神様です。
現在、梅宮大社では「大和豊秋津島卜定記」の説を採用し、酒解神・酒解子神・大若子神・小若子神を、それぞれ日本書紀に登場する大山祇神・木花咲耶姫命・瓊々杵尊・彦火火出見尊にあてています。
- 酒解神(サカトケノカミ)=大山祇神(オオヤマヅミノカミ)
- 酒解子神(サカトケコノカミ)=木花咲耶姫命(コノハナサクヤヒメノミコト)
- 大若子神(オオワクコノカミ)=瓊々杵尊(ニニギノミコト)
- 小若子神(コワクコノカミ)=彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト)
橘氏の氏神が、醸造にまつわる神号で奉られた理由
奈良朝~平安朝初期は朝廷中心で酒造が行われ、日本酒醸造の責任者は女性でした。梅宮大社を創祀した犬養三千代は、当時宮中にあって酒造の責任者であったためではないかと考えられています。
・相殿
相殿4柱は仁寿年間(851年~854年)に合祀されました。
梅宮大社の創建に関わった橘氏ゆかりの方々です。
- 嵯峨天皇:第52代天皇。
- 橘嘉智子(檀林皇后):嵯峨天皇皇后。
- 仁明天皇:嵯峨天皇皇子、第54代天皇。
- 橘清友:橘嘉智子の父。
梅宮大社の主祭神は、お酒造りに特化した神様なんですね!
【2】御利益
創祀に由来する「酒造守護」の御利益を中心に、「子授け・安産」「学業・音楽・芸能」などの御利益で有名です。
・酒造の守護神
醸造に縁のある神号を捧げて奉祀しているのは唯一、梅宮大社だけです。
そのため、いにしえより全国の酒造家に日本第一酒造の祖神として尊崇されてきました。
本殿にお祀りされている、大山祗神(=酒解の神)、木花咲耶姫命(=酒解子神)、瓊ヶ杵尊(=大若子神)、彦火火出見尊(=小若子神)は、日本書紀に登場する神々。
日本書紀によると、木花咲耶姫命が彦火火出見尊を安産され、喜んだ父・大山祗神が、狭名田(サナダ)の茂穂で天甜酒(アメノタムサケ)を醸み造って天神地祓にお供えになったのが日本酒醸造の始まりとされています。
・子授け、安産の守護神
- 御祭神・木花咲耶姫命は、結婚して一夜で懐妊します。しかし夫に自分の子か疑われ、天地神明に誓い火を放った御殿の中で3柱の御子を無事に出産。このエピソードから、安産の守り神として信仰されています。
- 子供に恵まれなかった嵯峨天皇の后・橘嘉智子(檀林皇后)は梅宮大社で祈願して懐妊。無事に仁明天皇を安産されたことから、子授け・安産の守護神として朝廷や民間の信仰を集めました。
檀林皇后の安産祈願、懐妊・出産の際の不思議なエピソードは今に伝わります。
・「またげ石」をまたいだら子を授かった。
・「産砂お守り」産殿の床に梅宮社の砂を敷くと安産だった。
現在も子宝祈願(有料)の際には、神域にある「またげ石」を夫婦一緒にまたぐそうです。また授与品として「安産(産砂お守り)セット」も用意されています。
・学業、音楽、芸能の守護神
相殿と摂社にお祀りされている神様の御利益です。それぞれ平安初期の学問興隆の基を築かれた業績から、学業成就の守護神して信仰されています。
- 嵯峨天皇
書道に秀で三筆の第一と讃えられ学業の興隆の基を築きました。 - 檀林皇后
唐より名禅僧義空を招いて学問の寺、檀林寺を創設。 - 橘氏公(たちばな の うじきみ)、橘逸勢(たちばな の はやなり)
摂社に奉祓される橘氏公は橘学館院を創設、橘逸勢は弘法大師と並ぶ三筆の一人とされた書道の先達です。 - 仁明天皇
学問を好み多芸で知られ弓射をはじめ鼓琴吹管をよくしたことから、音楽芸能の守護神とされています。
酒造家には酒造守護の御利益ですが、一般人には安産の御利益が有名^^
【3】梅宮大社 見どころ
江戸時代に再建された社殿、季節の花に彩られる神苑。猫好きの方には猫が見どころです。
境内の主要社殿は、元禄11年(1698年)火災で焼失。江戸幕府5代将軍 徳川綱吉の命で元禄13年(1700年)に再建されました。
・随身門
随身門(ずいじんもん)とは、神社を守護する門守神(かどもりのかみ)を安置した神門です。
門の左右には随身として、豊磐間戸命(トヨイワマドノミコト)・奇磐間戸命(クシイワマドノミコト)の神像が安置されています。
お酒の神様らしく、楼上の酒樽が目を引きます^^
・本殿、拝殿
本殿は三間社流造、屋根は檜皮葺。
拝殿は桁行三間・梁行三間の入母屋造、妻入、屋根は銅板葺。
・社務所と猫
楼門から入って、境内の左に社務所があります。この日は、白猫さんと黒猫さんがお出迎え^^
社務所の前にはベンチや猫ベッドが置かれていて、猫さんと会える確率大です。とはいえ、いつも猫さんが集まっているわけではないので、期待しすぎない方がいいと思います。
梅宮大社の猫さんたちに会いたい場合は、朝か夕方が狙い目だそうです。
・梅宮神苑(有料)
季節の花が楽しめる、3,000坪の回遊式神苑。チケットは社務所で購入します。
開花状況は、公式サイトで確認することができます。
・入苑料(神苑)大人 600円、子供 400円
・拝観時間 9:00~17:00(受付終了16:30)
梅宮神苑の花暦
春:梅、桜、つつじ、かきつばた
夏:花菖蒲、アジサイ
秋:紅葉、椿
冬:早咲梅
※閑散期は入苑お一人に付き鯉の餌一袋を進呈
神苑の花の季節にあわせて参拝するのがおすすめです!
【4】御朱印
社務所で拝受できます。
橘氏ゆかりの神社なので、橘の紋のはんこが押してありますね!
うしろの黒い物体は黒猫さんです。御朱印と一緒にカメラ目線が欲しかったのですが、無視されました^^
【5】梅宮大社 アクセス
最寄り駅、バス停留所
- 市バス「梅宮大社前」
梅宮大社まで徒歩約3分。京都市バス、3、28、29、71系統が停車します。 - 阪急電車 嵐山線「松尾大社駅」
桂川を渡って2つ目の信号を左折。梅宮大社まで徒歩約10分。
[地図]
B地点:梅宮大社
A地点:市バス「梅宮大社前」
C地点:阪急電車 嵐山線「松尾大社駅」
・京都駅から
- 地下鉄→ 阪急京都線→ 阪急嵐山線
(1) 地下鉄 国際会館行「四条烏丸駅」まで約3分。
→ [四条駅で阪急京都線に乗り換え]→
(2) 阪急京都線 大阪梅田行「桂駅」まで約5分~8分。
→ [桂駅で阪急嵐山線に乗り換え]→
(3) 阪急嵐山線 嵐山行「松尾大社駅」まで約4分。
※合計所要時間約30分~40分 - 京都駅前バスターミナル
・[C6のりば] 市バス28 嵐山大覚寺行「梅宮大社前」まで約37分。 - TAXI 所要時間 約22分
総距離 約7.6km タクシー料金検索
※料金・所要時間は実際とは異なる可能性があります。
・四条河原町から
- 阪急京都線→ 阪急嵐山線
(1) 阪急京都線 大阪梅田行「桂駅」まで約5分~8分。
→ [桂駅で阪急嵐山線に乗り換え]→
(2) 阪急嵐山線 嵐山行「松尾大社駅」まで約4分。
※合計所要時間約15分~30分
松尾大社も近いので、一緒に参拝するのもおすすめ。安産祈願なら月延石が有名な月読神社も徒歩圏内です。
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※この記事の史実に関する記載は、梅宮大社公式サイト、駒札、Wikipedia等を参考に作成しました。
梅宮大社(うめのみやたいしゃ)
所在地 京都市右京区梅津フケノ川町30
TEL.075-861-2730
境内無料
・梅宮神苑 入苑料 大人 600円、子供 400円
・拝観時間 9:00~17:00(受付終了16:30)
梅宮大社 公式サイト