今宮神社は古来、疫病除けの御利益で有名な神社です。
門前菓子「あぶり餅」は、疫病除け・無病息災のご利益があるとして当時から大人気で、1,000年以上経った現在も人々に愛され続けています。
また、最近は厄除けだけではなく、中興の祖である桂昌院(徳川綱吉の生母)のエピソードから「玉の輿神社」と呼ばれ、良縁開運の御利益でも人気です。
今宮神社の由緒や歴史、神占石とよばれる奇石「阿呆賢(あほかし)さん」など、見どころや御利益、御朱印などをご紹介します。
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【1】今宮神社とは?
今宮神社の創建は平安時代の正暦5年(994年)。
たびたび疫病が流行するのは怨霊の祟りだと信じられていた時代。今宮神社は怨霊を鎮魂するために各地で営まれた御霊会のひとつ「紫野御霊会」から始まった由緒ある神社です。
・今宮神社の由緒
平安時代、平安京が都となり栄える一方で、人々は疫病や災厄に悩まされ、これらは怨霊の祟りだと恐れられました。荒ぶる怨霊を鎮魂するために、神泉苑、御霊社、祇園社など各地で盛んに御霊会が営まれました。
今宮神社も祇園社(八坂神社)と同様に、疫病退散の御霊会が行われていた由緒ある神社です。今宮神社の鎮座する紫野は、かつては禁野(皇族が狩りを楽しむ遊猟場)だったため「紫野社」「紫の若宮」とも呼ばれました。
御霊会で行われた祭礼は、4月の「やすらい祭」、5月の「今宮祭」に受け継がれています。
今宮神社の歴史
- 京都紫野の地には平安建都(794年)以前より、疫神スサノオを祀る社(現在摂社:疫社)があったといわれます。
- 正暦5年(994年)都で流行した疫病を退散させるために、一条天皇は2基の神輿を船岡山に安置。民衆主導で怨霊を鎮魂する「紫野御霊会」が営まれました。
- 長保3年(1001年)疫神の示現があったため、天皇は船岡山の北麓のこの地に三宇の神殿を造営、疫神を船岡山から移し御霊会を催したことが今宮社の始まりとなります。
- 紫野御霊会に始まった今宮祭は中世まで官祭として営まれます。しかし久寿元年(1154年)夜須礼(やすらい)で今宮に詣でるのが華美過ぎると禁止され、それとともに「今宮祭」も衰えていきます。
- 中世は法金剛院、仁和寺の鎮守社。弘安7年(1284年)正一位の神階が与えられました。
- 応仁・文明の乱(1467年~1478年)で今宮神社は荒廃、焼失。
- 寛永21年(1644年)仁和寺門跡・覚深法親王が、仁和寺の「寛永再興」の一環として、徳川3代将軍家光の援助のもと、本殿・拝殿・末社を造営。
- 元禄7年(1694年)徳川5代将軍綱吉の生母・桂昌院が、御牛車や鉾を寄進したほか、やすらい祭の復興など様々な施策を行ないました。
- 明治29年(1896年)本社殿を焼失、明治35年(1902年)に再建。
・ご祭神とご利益
平安時代の悪疫退散からはじまり、健康長寿、福徳長寿、家内安全、家業繁栄、商業繁栄、良運開運、五穀豊穣、農業繁栄のご利益があるとされています。
幅広いご利益の中でも、最近は「玉の輿神社」として人気。
- 本社
東御座 事代主命(コトシロヌシノミコト)
中御座 大己貴命(オオナムチノミコト)
西御座 奇稲田姫命(クシナダヒメノミコト) - 疫社
素盞嗚尊(スサノオノミコト)
本殿前の正面スペースは、広く白砂がまかれ結界になっていて神聖な雰囲気。
疫社は現在摂社ですが、本社より古くから祀られていたといわれます。かつては疫神を鎮めるために朝廷から勅使が遣わされました。4月の「やすらい祭」は疫社のお祭りです。
境内には織姫社・八幡社・大将軍社・日吉社・紫野稲荷社・織田稲荷社・地主稲荷社・若宮社・月読社・宗像社など、たくさんの摂社があります。
中でも織姫社は、縁結び・技能上達などのご利益があると信仰を集めます。御祭神は栲幡千千姫命(タクハタチヂヒメノミコト)で、七夕伝説の織女に機織を教えた神と言われます。
社殿は新しめですが、とても由緒ある神社です。
【2】中興の祖|桂昌院
今宮神社の中興の祖として、現在も氏子から遺徳を称えられている「桂昌院(けいしょういん)」は、江戸幕府5代将軍・徳川綱吉の生母。
桂昌院は一般市民の身分から、女性の最高位・従一位の官位まで上り詰めたことから、「玉の輿」という言葉の由来になったともいわれています。
玉の輿(たまのこし)
出典:大辞林
(1) 貴人の乗る美しい立派な輿。
(2) 女性が結婚によって得る富貴の身分にになること。
・一般人から最高位 従一位へ
- 寛永5年(1628年)西陣で八百屋の次女に生まれ、名を「玉」といいました。 父没後、公家二条家に出入りする本庄宗利の養女になります。
- 関白家の鷹司孝子に仕え、孝子が将軍家光に入嫁するのに伴われて江戸城に入り、大奥では春日の局に認められ家光の側室となり、後に五代将軍となる綱吉を出産。
- 慶安4年(1651年)家光が没し、落飾して「桂昌院」と称します。
- 延宝8年(1680年)綱吉が5代将軍に就き、将軍の母として畏敬されて過ごし、元禄15年(1702年)には女性最高位の従一位の官位を賜ります。
- 神仏を尊崇し諸国の寺社再興を援助。今宮神社にも社殿の造営と神領を寄進。途絶えていたやすらい祭りも復活させ、今宮祭には御所車、鉾も寄進、御幸道も改修させました。
- 宝永2年(1705年)死去。79才
・御朱印、玉の輿守
やすらい祭の花傘のスタンプが印象的な見開きの御朱印は、玉の輿と書いてあります。はさみ紙も花傘で可愛いです。
※1ページの普通の御朱印もあります。
玉の輿のお守りもありました^^
桂昌院は生まれ持った運や、今宮神社の御利益を最大限に生かしつつ、努力で幸運を勝ち取った女性のように感じます。
【3】今宮の奇石|阿保賢さん
阿保賢さんは、病にも効くし、占いも出来るというパワーストーン。
拝殿の西側にある小さなお社に置かれています。
・病に効く神占石
阿保賢(あほかし)さんは、古くから神占石と云われています。
病弱な方は、この石に病気平癒を心を込めて祈り、軽く手の平で石を撫でてから、身体の悪い部分をさすれば健康の回復が早まるそうです。
・重軽石として占い
阿保賢さんは重軽石(おもかるいし)とも云われ、占いにも使われています。
- 軽く手の平で3度石を打ち、持ち上げて重さを覚えて元に戻します。
- 次は願い事を込めて石を3度手の平で撫で、再度持ち上げます。
2度目の方が軽く感じられたなら、願いが成就すると言い伝えられています。
重さが変わらないと占いようがないので思い込みが大切かも。「軽くなれ~!軽くなれ~!」
【4】門前菓子|あぶり餅
今宮神社の東門参道(旧参道)には、2軒のあぶり餅のお茶屋さんがあります。参道に漂う香ばしい匂いは素通り出来ない魅力を放っています。
南側にある「一和(一文字屋和輔)」は、平安時代に一条天皇が今宮神社を建立した時を同じくして、先祖が移り住んだと言い伝えられているそうです。
もう一軒、北側にある「かざり屋」も創業400年近い老舗。あぶり餅と今宮神社は、切っても切り離せない関係ですね^^
・今宮神社の斎串を再利用
平安時代、今宮神社のやすらい祭りで、猛威を振るった疫病が鎮まります。あぶり餅は、厄除けに神前に供えた餅を食したのが起源といわれ、食べると流行り病に罹らないと人気になりました。人々は社に詣でた後に、持ち帰り食べたと言います。
あぶり餅に使う竹串は、今宮神社に奉納された斎串(いぐし)を再利用していた事から、疫病除け・無病息災を願う縁起物の餅として、ますます有名になったようです。※近年は竹が足りないので購入されています。
また、境内の摂社・織姫社ともゆかり深く、西陣で機織の際にこの竹串を付けると上手に織り出せると言われました。
・あぶり餅は素朴な美味しさ
100%もち米の、つきたてのやわらかいお餅を親指サイズにちぎり、きな粉をまぶし、竹串に刺して備長炭でこんがり焼き、膨らんできたら白味噌ベースのタレをつけて、すばやく皿の上に移し提供されます。
白味噌のほんのりとした甘さがお口の中にふわぁっと広がり、とても幸せな気分になれる素朴なお菓子です。
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今宮神社に参拝してから、あぶり餅をいただくのがお薦め。先に食べると美味さに満足して参拝するのを忘れそう^^
【5】今宮神社 アクセス
京都市バスが便利。「今宮神社前」バス停すぐ。「船岡山」バス停からは徒歩約8分です。
・船岡山バス停からのルート
鳥居のある今宮門前通を通って今宮神社を参拝し、あぶり餅で休憩するコースです。※2018年秋の台風被害で現在は船岡山の鳥居は根元だけになっています。
・京都駅から
- 京都駅前バスターミナルのりば案内
[A2・B3のりば] 市バス205 金閣寺・北大路バスターミナル行に乗車「船岡山」下車。乗車時間:約47分。
[A3のりば] 市バス206 大徳寺・北大路バスターミナル行に乗車「船岡山」下車。乗車時間:約38分。 - 地下鉄烏丸線 国際会館行に乗車「北大路駅」下車→市バスに乗換
市バス204、205、206、1、12、M1、北8「船岡山」下車。合計所要時間:約26~31分。 - TAXI 所要時間 約23分
総距離 約8.6km タクシー料金検索
※料金・所要時間は実際とは異なる可能性があります。
・四条京阪前から
- 市バス46 千本通・上賀茂神社行に乗車「今宮神社前」下車。乗車時間:約39分。
近くには大徳寺があり、建勲神社(たけいさおじんじゃ)も徒歩圏内です。
※この記事の史実に関する記載は、今宮神社公式サイト、駒札、京都風光サイト、Wikipedia等、書籍「京都の寺社505を歩く」を参考に作成しました。
今宮神社
所在地 京都市北区紫野今宮町21
TEL.075-491-0082(受付9:00~17:00)
紫野 今宮神社 公式サイト